「3on3のシングルバトルですわ!覚悟は宜しいですね!」
二人はほぼ同時にモンスターボールを投げる。
アカシアが出したポケモンはミルタンク、由樹が出したポケモンはニューラだった。
「先手必勝ですわ!ミルタンク、ころがる!」
アカシアが指示を出すと、ミルタンクは体を丸め、猛スピードで縦回転しはじめた。
そして縦に回した駒のように、ニューラに向かって突進していった。
しかしニューラは跳び上がり、いとも簡単に避けて見せた。
「そういう技は相手に隙ができてから使うんですよ」
余裕の表情で由樹が笑う。アカシアは悔しそうに下唇を噛み締める。
「今度はこっちの番だ!霧紅、挑発!」
指示を受けたニューラはミルタンクに向けて中指を立て、くいくい、と挑発した。
するとミルタンクは怒り狂った雄牛のようにニューラにめがけて転がっていった。
またニューラはいとも簡単に避ける。
「そうだ、霧紅。もう一度挑発!」
またニューラがミルタンクを挑発する。そして闘牛士のように、ひらりとミルタンクをかわす。
「止まるのです!ミルタンク!」
アカシアがミルタンクを止めようとしても、ミルタンクは攻撃が当たらない事と、ニューラの挑発で完全に我を忘れていた。
そして、ニューラに全身全霊の力を込めて突進していった。
ニューラはそれを軽々とかわす。先程と同じパターンだった。
しかし、一つだけ違うことがあった。
ニューラのすぐ後ろには、この部屋の中心となっている噴水があったのだ。
ミルタンクは、それに気付いたが、もう遅かった。
かなりの高速で噴水に激突し、その衝撃で噴水はバラバラに砕け、ミルタンクはノックダウンしてしまった。
「もうミルタンクは戦えませんね。こっちは攻撃技使ってませんよ?」
険しい表情のアカシアに由樹が言う。
「まさか勝ったつもりでいるんですか?私の手持ちにはまだ二匹いるのですよ」
「たった二匹、でしょう?」
「・・・その余裕、崩して差し上げますわ!出なさい、ハピナス!」
アカシアはモンスターボールからハピナスを出した。
「あれ?ハピナスは切り札じゃないんだ」
と、拍子が抜けたように由樹が言う。
「切り札はもっと怖いポケモンですわ」
アカシアは不適に笑った。よほど切り札に自信があるのだろう。
「ハピナスか・・・霧紅、猫騙し」
由樹が指示を出すと凄いスピードでニューラはハピナスめがけて駆けていき、目の前でパチンと手を鳴らした。
思わず怯むハピナスに、ニューラは背後から一撃を浴びせる。
しかしハピナスは蚊にでも刺されたかのようにけろっとしている。
「あはは!育て方が甘いんじゃなくて!」
アカシアが先程の屈辱を晴らさんばかりにと高笑いする。
しかし、由樹は少しも動揺しなかった。
「戻れ、霧紅」
そういって由樹はニューラをボールに戻した。そして、新しいボールを取り出す。
「こんなところで使いたくなかったけど・・・時間も無いししょうがないか。・・・出ろ、氷王!」
由樹がボールを投げると、中からフリーザーがキラキラと輝いて羽ばたいた。
「氷王、吹雪」
彼はフリーザーに指示を出す。指示を受けたフリーザーは、輝くような白い息を吐き出し、羽を羽ばたかせその白銀の息を飛ばした。
すると白い息はたちまちすさまじい量の豪雪にかわり、ハピナスを襲った。
ハピナスはなすすべも無く吹雪に包まれ、その低温に悶えて倒れこんだ。
アカシアがハピナスをボールに戻す。その手は震えていた。
恐らく、このまま切り札を出しても、なすすべも無く負けるであろう。
負のイメージが、彼女を包み込む。その時、すでに勝負はついた。
「降参ですか?ではハピナスは頂いていきますね」
「待って!ハピナスを連れて行かないで!」
必死にアカシアが助けを請う。その目には涙が浮かんでいる。
「・・・今になって何を言ってるんですか」
「・・・人でなし!」
「仕事ですから」
由樹はそう冷たく言うと、ハピナスを自分のモンスターボールに入れ、そのボールをかばんの中に詰め込んだ。
そしてボールからペリッパーを出し、部屋の窓から飛び去っていった。
部屋には涙を浮かべた少女だけが取り残されていた。
守るため壊し合い
守るため壊し合い
人は前に進めたのだろうか
終わりはしない負の連鎖
あとがき
オリトレ小説、始めてしまいました・・・!
何か色々と見てられない感じですね・・・
アカシアの切り札はトゲキッスでしたが、あまりにも文章が長くなりそうだったので端折りました。
まあ、トゲキッスが出てきてもフリーザーで秒殺ですからね!文章的にはあんまり変わりません。
それにしても由樹が強すぎたかも・・・ジムリーダーで太刀打ちできないってどんだけだ。
まあ、アカシアは実力は弱い方ってことで・・・
(08.02.11)